ニュースの隠語とは
テレビや新聞、ラジオなどで事件や事故を報道する際、直接的な表現を避けることがあります。これは、視聴者や読者に配慮するためであり、同時に報道機関がニュアンスをコントロールする目的もあります。こうした報道上の「婉曲表現」や「業界用語」は、一般に“ニュースの隠語”と呼ばれます。
背景を知っていると、「なぜこう伝えるのか」が見えてきて、さらにニュースを深く理解できるようになります。まるで新聞に“暗号”が隠れているような感覚ですね。この記事では、最新動向を踏まえながら代表的な隠語をわかりやすく解説します。
ニュースの隠語と意味
以下は、頻出度が高く、特に報道現場で使われる用語たちです。
「保護されました」「無事保護されました」「発見されました」
- 保護されました
行方不明だった方が 負傷・体調不良 の状態で見つかった場合に使われます。 - 無事保護されました
行方不明だった方が 無傷 で見つかったケースです。 - 発見されました
行方不明だった方が 遺体 で見つかった際に使われます 。
こうした言い回しで、報道のトーンをやわらかく調整しています。
「全身を強く打った状態で発見」「性別不明の遺体で発見」「頭を酷く打ち遺体で発見」
- 全身を強く打った状態で発見:体が損傷して原形をとどめない状態で見つかるケース 。
- 性別不明の遺体で発見:損傷で性別判定が困難な状況。
- 頭を酷く打ち遺体で発見:頭部がひどく破損している状態で見つかること。実は「頭を強く打った」という表現は、必ずしも原形をとどめない状態を指すとは限らないと注意喚起されています。
傷害表現
- 軽傷:全治1カ月未満
- 重症:全治1カ月以上
- 重体:生命の危険がある深刻な状態
- 危篤:今にも命が危ない緊迫状態
- 死亡:事故や事件で亡くなった状態
- 死去:病気や老衰などで自然に亡くなった場合 。
性犯罪関連
- 暴行:強制的・挿入を伴う性的暴力(強姦)
- 乱暴:挿入なしの性的暴力行為。
- わいせつな行為:身体に触れるなどの性的接触
- 淫らな行為:合意があるが法的に問題となる性的接触 。
- いかがわしい行為:風紀に反する不適切な行動
- 着衣の乱れがある:暴行後など、服装が乱れていたことを示します。
捜査・起訴関連
- 書類送検:在宅事件で警察が証拠書類を検察に送ること。正式な起訴ではないため、前科にはなりません 。
- 政府筋/官邸筋/政府高官:首相官邸や内閣官房など政府関係者が情報源であることを示すぼかし表現。
なぜ隠語を使うの?3つの理由
- 視聴者への配慮
過度に刺激的な表現を避け、安心して視聴できるようにします。 - 法的リスク回避
捜査中などは情報が確定していないため、断定せずに報道するために用いられます。 - 報道のニュアンス調整
嫌悪感や不快感を和らげ、報道の重みとバランスを保つ意図があります。
たとえ話でわかりやすく
想像してみてください。あなたが料理番組を見ていて、シェフが「今日はとても辛い料理を作りました」とだけ言ったら、どのくらい辛いか想像しづらいですよね。でも「舌がしびれる辛さです」と言われると、ピリッとした表現が心に響きます。ニュースの隠語も同じで、過剰に直接的な表現を避けつつ、本質を伝えるために選ばれています。
注意点
- 見方に注意:「頭を強く打った」=即「原型をとどめない」わけではない。
- 用語の変化:隠語も時代とともに変わります。10年後には別の表現が主流かもしれません。
- 多義的表現:「保護されました」は無傷ではなく負傷の可能性もあるため、読み手の誤解を招かないよう文脈をよく読むことが大切です。
読者のみなさんへ
ニュースは「正しく理解したいけれど、言葉がやわらかすぎてモヤモヤする…」と感じることもありますよね。でも、言葉の裏にある仕組みを知ると、不安や疑問がすっと減っていきます。安心してください。それは記者やメディアが、あなたに誤解なく伝えたい気持ちの表れなのです。