なぜお祝いに赤飯?由来は縄文時代の「赤米」にあった

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赤飯とは?まず基本をおさらい

お祝いの席に並ぶ「赤飯」。ピンクがかった赤い色と、もちもちした食感が特徴的な日本の伝統料理です。まずは「そもそも赤飯ってどんな食べ物?」という基本から確認しておきましょう。

赤飯の材料と作り方の基本

赤飯は、もち米に小豆(あずき)やささげ豆を加えて蒸した「おこわ」の一種です。豆を煮た際に出る赤い煮汁をもち米に吸わせることで、あの独特の赤みが生まれます。食べるときには胡麻塩を振りかけるのが一般的です。

家庭で作る場合はせいろで蒸すのが本格的ですが、最近は炊飯器で手軽に炊けるレシピも広まっています。

赤飯を食べる代表的なシーン

赤飯は「ハレの日」の食事として、人生の節目に登場します。具体的には、帯祝い(妊娠5か月の安産祈願)、出産祝い、お食い初め、初節句、七五三、入学式、成人式、還暦祝いなど。結婚式の引き出物に添えられることもあります。

つまり、「おめでたいことがあったら赤飯」というのが、日本人の食文化に深く根づいているわけです。

「おこわ」との違いは?

「おこわ」とはもち米を蒸した料理全般を指しますが、地域によっては赤飯のことを「おこわ」と呼ぶこともあります。厳密には「おこわ=もち米を蒸した飯」「赤飯=おこわの中で小豆などで色づけしたもの」という関係ですが、現代では両者が混同されることも珍しくありません。

赤飯のルーツは縄文時代の「赤米」にあった

「赤飯の赤は小豆の色」と思っている方が多いかもしれません。しかし、赤飯のルーツをたどると、小豆ではなく「赤米(あかまい)」という古代の米に行き着きます。

赤米とは?日本最古の米

赤米は、縄文時代に中国大陸から日本に伝わったとされるインディカ種の米です。「古代米」とも呼ばれ、玄米の糠層にタンニン系の赤い色素を含んでいます。炊き上げると、ちょうど現在の赤飯のような赤褐色になるのが特徴です。

野生の稲のほとんどは赤米だったとも言われており、日本で最初に栽培された米は白米ではなく赤米だったと考えられています。

なぜ赤米は神様に供えられたのか

古代日本では、「赤い色には邪気を祓う力がある」と信じられていました。墓室の壁画に辰砂(水銀朱)が使われていたり、日本神話に「丹塗矢(にぬりや)」という赤い矢の伝承があったりするのも、この信仰の表れです。

また、米は当時の日本において最も価値の高い食糧でした。稲作信仰を基盤とする神道では、「田の神」への感謝を込めて米を捧げる風習が生まれます。そこで、「赤い色」と「米」という二つの神聖なものが結びつき、赤米を神様に供えるようになったと考えられています。

現在でも、11月23日の新嘗祭(にいなめさい)では、全国各地の神社で赤米を含む五穀が奉納される風習が残っています。

品種改良で赤米は消え、「小豆で代用」する時代へ

赤米は江戸時代以前まで庶民の間でも食べられていましたが、味の面では現在の白米(ジャポニカ種)に劣るとされていました。稲作技術が発展し品種改良が進むと、収量が安定して味の良い白米が主流になっていきます。

しかし、「赤い色のご飯を神様に供える」という風習は根強く残っていました。そこで江戸時代中期ごろから、白米を小豆の煮汁で色づけするという代用法が広まったとされています。これが、現在私たちが食べている「小豆の赤飯」のルーツです。

つまり、赤飯の歴史は「赤米→白米+小豆」という変遷をたどってきたわけです。

赤飯がお祝いに食べられるようになった理由

では、なぜ赤飯は「お祝いの席で食べるもの」として定着したのでしょうか。その背景には、赤い色に込められた信仰と、神様への供物という歴史があります。

赤い色には「魔除け」の力があると信じられていた

先述のとおり、古代日本では赤い色に呪力があり、災いを避ける力があると信じられていました。これは日本だけでなく、世界各地の文化にも見られる普遍的な信仰です。

赤飯の赤い色は、単なる「おめでたい色」ではなく、「邪気を祓い、福を招く色」として捉えられていたのです。

神様へのお供え→人間も「おすそわけ」で食べた

新嘗祭などの神事で赤米を神前に供えた後、そのお下がりを人間も食べるという習慣がありました。神様に捧げたものをいただくことで、その霊力を分けてもらうという考え方です。

赤飯が「特別な日の食事」として位置づけられたのは、こうした神事との結びつきが大きいと考えられます。

室町時代に「祝儀用」として定着

赤飯の原型は、平安時代中期に書かれた『枕草子』に「小豆粥」として登場します。また、鎌倉時代後期の宮中献立を記した『厨事類記』には、3月3日(桃の節句)、5月5日(端午の節句)、9月9日(重陽の節句)といった季節の節目に赤い飯を食べたという記録があります。

室町時代になると、赤飯は祝儀用の料理として本格的に定着しました。この頃から「めでたい席には赤飯」という認識が広まったようです。

江戸時代後期には一般庶民の「ハレの日」の食卓へ

江戸時代後期になると、赤飯は武家や公家だけでなく、一般庶民の間にも広まっていきます。身近な祝い事――出産や結婚、新築祝いなど――でも赤飯が食べられるようになりました。

また、当時流行した「江戸病」こと脚気(かっけ)の予防に、小豆に含まれるビタミンB1が効果的だったことも、赤飯が広く食べられるようになった理由の一つとされています。おいしくて縁起がよく、しかも健康にもいい。赤飯が愛され続けた理由がわかります。

【意外】葬式に赤飯を出す地域がある?「凶事」と赤飯の関係

「赤飯=お祝い」というイメージが強いですが、実は不祝儀の場で赤飯を食べる風習も存在します。

「縁起直し」という考え方

日本には「縁起直し」という言葉があります。これは「凶を返して福となす」という意味で、縁起の悪い出来事が起きたときに、あえて縁起の良いものを用いて運気を転じようとする考え方です。

赤飯の赤い色には邪気を祓う力があると信じられていたため、「悪いことがあったときこそ赤飯を食べて厄を落とす」という発想が生まれたのです。

長寿を全うした人の葬儀で赤飯を出す地域

福井県の沿岸部や神奈川県、新潟県、富山県、千葉県の一部地域などでは、長寿を全うした故人の葬儀で参列者に赤飯を振る舞う風習が残っています。「赤飯供養」とも呼ばれるこの習慣は、天寿をまっとうした人生を祝う意味も込められているといわれます。

地域によっては「70歳以上で亡くなった方の葬儀には赤飯を出す」といったルールがあるところも。お祝いだけでなく、人生の締めくくりにも赤飯が登場するのは、赤飯と日本人の深い結びつきを感じさせます。

江戸時代の文献「萩原随筆」に残る記録

江戸時代の文献『萩原随筆』には、「凶事ニ赤飯ヲ用ユルコト民間ノナラワシ」(凶事に赤飯を用いることは民間のならわしである)という記述があります。つまり、江戸時代にはすでに不祝儀で赤飯を食べる風習が存在していたということです。

「赤飯=おめでたい」という固定観念は、実は近代以降に強まったものかもしれません。本来の赤飯は「ハレの日」だけでなく、人生のさまざまな節目に寄り添う料理だったのです。

地域でこんなに違う!日本各地の赤飯事情

赤飯は全国で食べられていますが、実は地域によって材料や味付け、色合いがかなり異なります。

関東は「ささげ」、関西は「小豆」

赤飯に使う豆は、関東と関西で違いがあります。関西では「小豆」が一般的ですが、関東では「ささげ」を使う地域が多いです。

なぜかというと、小豆は煮ると皮が破れやすく、その様子が「切腹」を連想させるとして、武家の間で避けられたから。皮が破れにくいささげが代わりに使われるようになったのです。これは江戸の武家文化の名残りといえます。

北海道・山梨は「甘納豆」を入れる甘い赤飯

北海道や山梨県、青森県の一部などでは、小豆やささげの代わりに「甘納豆」を使った甘い赤飯が定番です。甘納豆では赤色がつかないため、食紅で色づけするのが特徴。紅しょうがを添えて食べることも多いです。

この甘納豆赤飯は、昭和時代に「忙しいお母さんでも手軽に作れるように」と考案された時短レシピがルーツとされています(札幌の学校法人創設者・南部明子氏が広めたという説あり)。今では北海道のコンビニで甘納豆赤飯のおにぎりが普通に売られています。

新潟・千葉には「醤油味」や「落花生入り」も

新潟県では「しょうゆ赤飯」と呼ばれる醤油風味の赤飯が食べられています。小豆ではなく金時豆を使い、醤油で味付けするため、見た目は茶色っぽい独特の仕上がりになります。

また、千葉県の一部地域では、特産の落花生を入れた赤飯もあるとか。全国各地に「うちの赤飯」があるのは、日本の食文化の豊かさを感じさせますね。

南天の葉を添える意味は?

赤飯には南天(なんてん)の葉を添えることがあります。これは「難(なん)を転(てん)じる」という語呂合わせから、縁起の良い飾りとして用いられてきました。

また、南天の葉には防腐作用があるとも言われており、実用的な知恵としても役立っていたようです。見た目の美しさ、縁起のよさ、実用性の三拍子がそろった先人の工夫です。

赤飯にまつわる豆知識・雑学

ここからは、会話のネタになる赤飯トリビアをご紹介します。

11月23日は「お赤飯の日」

毎年11月23日は「お赤飯の日」として、赤飯文化啓発協会によって制定されています。この日は、古くから新嘗祭(にいなめさい)として五穀を神様に奉納する日。赤飯の起源である赤米もこの日に捧げられてきたことから、感謝の気持ちを込めて「お赤飯の日」となりました。

現代では「勤労感謝の日」として知られていますが、もともとは収穫への感謝を捧げる祭事だったのです。

赤飯の栄養価は白飯より高い?

赤飯は白飯に比べて栄養価が高いとされています。小豆には銅、たんぱく質、亜鉛などが豊富に含まれており、特にビタミンB1は糖質の代謝を助ける働きがあります。江戸時代に脚気予防として食べられていたのも納得です。

また、もち米を使うため腹持ちがよく、エネルギー源としても優秀。お祝いの席だけでなく、日常の食事に取り入れても良い食品といえます。

ごま塩をかける理由

赤飯にごま塩を振りかけるのは定番ですが、縁起を担いで「ごまを炒らない・切らない」のが正式な作法とされることも。「炒る」は「煎る」に通じて縁起が悪い、「切る」は「縁を切る」に通じる、という考え方からです。

とはいえ、現代ではそこまで気にする人は少なく、好みでごま塩をかけて楽しめばOK。大切なのは「お祝いの気持ち」ですね。

よくある質問(FAQ)

Q1. 赤飯は誕生日に食べてもいい?

A. もちろん問題ありません。誕生日は「ハレの日」の一つですから、赤飯でお祝いするのは伝統に沿った行為といえます。近年はケーキが主流ですが、年配の方へのお祝いや和風の食卓には赤飯もよく合います。

Q2. 赤飯を炊くのは「女の子のお祝い」だけ?

A. いいえ、男女問わず人生の節目に食べられます。かつては女児の初潮を赤飯で祝う風習がありましたが、赤飯自体は出産・入学・成人・還暦など、性別を問わない祝い事に広く用いられてきました。

Q3. 赤飯は冷凍保存できる?

A. 可能です。ラップで小分けにして冷凍し、食べるときは蒸すか電子レンジで温めると、もちもち感が復活します。お祝いで余った赤飯も、冷凍しておけば無駄になりません。

Q4. コンビニの赤飯おにぎりも縁起物として使える?

A. 厳密なしきたりを求める場面でなければ、十分に「縁起物」として楽しめます。手軽に「ハレの気分」を味わいたいときや、ちょっとした自分へのご褒美にもおすすめです。

Q5. 赤飯を食べてはいけない日はある?

A. 特にありません。むしろ、凶事に食べる地域もあるほどで、「縁起直し」としてどんな日に食べてもOKというのが本来の考え方です。気軽に楽しんでください。

まとめ|赤飯のルーツを知ると、もっとおいしくなる

最後に、この記事のポイントをおさらいしましょう。

1. 赤飯のルーツは縄文時代に伝来した「赤米」
現在の赤飯は小豆で色をつけていますが、その原型は、炊くと赤くなる古代の米「赤米」でした。赤米は神様に供える神聖な食べ物として、新嘗祭などの神事で奉納されてきました。

2. 赤い色には「魔除け」「邪気払い」の意味があり、祝いの席で定着
古代日本では赤い色に呪力があると信じられていました。神様へのお供えのお下がりとして食べられていた赤飯は、室町時代に祝儀用として定着し、江戸時代後期には庶民の「ハレの日」の食卓にも広まりました。

3. 地域によって味も見た目も違い、凶事に食べる風習もある
関東と関西で使う豆が違ったり、北海道では甘い赤飯が主流だったり。さらに、長寿を全うした方の葬儀で赤飯を出す「縁起直し」の風習も存在します。赤飯は、日本の多様な食文化を映す鏡のような存在です。

次に赤飯を食べるとき、その一口に込められた3000年の歴史と、先人たちの祈りを思い出してみてください。きっと、いつもより少しだけおいしく感じるはずです。


※ 諸説注意
この記事で紹介した歴史や由来には諸説あります。赤飯のルーツについては、文献や地域によって異なる解釈があることをご了承ください。

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