ビジネスを進めるうえで避けて通れないのが「経費」と「勘定科目」の管理です。経理担当者だけでなく、経営者や現場で働くビジネスマンにとっても、これらの知識は業務の効率化やリスク回避のカギになります。
「この出費、どの勘定科目で処理すればいいんだろう?」
「領収書がたまってきたけど、分類が難しい…」
そんな悩みを感じたことはありませんか?
経費や勘定科目の考え方は、一言でいえば「会社のお金の流れを正しく記録するための“引き出し”を決める作業」です。たとえば、自宅の引き出しを整理するときに「文房具はここ」「お菓子はここ」と分けるように、会社の出費も“経費一覧表”や“勘定科目早見表”を使って適切に仕分けます。
このページでは、最新の公的な情報を参考に、誰でもすぐに使える経費・勘定科目の一覧表と、よくある実務上のポイントを徹底的にまとめました。
読んだ後に「なるほど!」と納得できる、現場で“すぐ役立つ”内容を心がけています。
※税務や会計処理は専門性が高いため、最終的な判断には税理士や公認会計士など専門家の監修が必要です。最新情報や詳細は国税庁・中小企業庁などの公式発表もあわせてご参照ください。
経費の分類は“冷蔵庫の整理”と似ている
例えば、冷蔵庫の中身を整理するとき、「これは野菜室」「これはチルド」「これは冷凍」と、それぞれ分けて入れますよね。
もし、すべてを無造作に放り込んでしまうと、どこに何があるのか分からなくなり、食材を無駄にしてしまうことも…。
経費や勘定科目の管理もこれと同じです。正しく分類することで、「どこに・どれだけのお金を使ったか」が明確になり、無駄な出費の発見や、節税対策、資金繰りの見直しにも役立ちます。
経費 一覧表・勘定科目 早見表(2025年版)
下記の表は、日本国内の中小企業・個人事業主・法人向けに使われる主な経費と勘定科目を、実務で頻出するものから網羅的にまとめたものです。
(参考:国税庁「経費として認められるもの」、中小企業庁「会計指針」)
経費項目 | 主な勘定科目 | 内容・具体例 | 損金算入可否 | 注意点・補足 |
---|---|---|---|---|
旅費交通費 | 旅費交通費 | 電車・バス・タクシー・飛行機・出張時の宿泊費 | ○ | 通勤交通費は「福利厚生費」の場合もあり |
通信費 | 通信費 | 電話代・携帯代・インターネット回線費用 | ○ | 個人利用と業務利用を区別 |
水道光熱費 | 水道光熱費 | 電気代・ガス代・水道代 | ○ | 自宅兼用の場合は按分が必要 |
消耗品費 | 消耗品費 | 文房具・コピー用紙・PC周辺機器(10万円未満) | ○ | 10万円以上は「備品(資産計上)」 |
事務用品費 | 消耗品費 | 上記に同じ(文房具、オフィス用品など) | ○ | 「消耗品費」とまとめて処理されることが多い |
福利厚生費 | 福利厚生費 | 慶弔金・健康診断・社員旅行・飲食費(一部) | ○ | 社員全体への還元が必要、役員のみは不可 |
交際費 | 交際費 | 取引先との会食・贈答品・慶弔費 | 一部制限あり | 法人は年800万円までなど制限あり |
会議費 | 会議費 | 社内会議・打合せの飲食代・お茶代など | ○ | 金額が大きい場合や外部接待は「交際費」扱い |
広告宣伝費 | 広告宣伝費 | 新聞・Web広告・DM発送・サンプル配布費 | ○ | 「販売促進費」とまとめて使う場合も |
販売促進費 | 販売促進費 | 販促用の景品・チラシ・キャンペーン費用 | ○ | 「広告宣伝費」との使い分けは会社ごとに異なる |
地代家賃 | 地代家賃 | 事務所・店舗・倉庫などの賃料 | ○ | 権利金・敷金は「長期前払費用」や「資産」扱い |
支払手数料 | 支払手数料 | 振込手数料・決済手数料・専門家報酬 | ○ | 専門家への報酬は「外注費」や「報酬」と区別 |
外注費 | 外注費 | システム開発委託・デザイン・清掃など業務委託費 | ○ | 雇用契約か請負契約かで扱いが変わる |
修繕費 | 修繕費 | オフィスの修理・設備メンテナンス費用 | ○ | 資本的支出との区分に注意(大規模修理など) |
保険料 | 保険料 | 損害保険・火災保険・賠償責任保険 | ○ | 生命保険や個人用のものは対象外 |
租税公課 | 租税公課 | 事業税・固定資産税・印紙税・登録免許税 | ○ | 法人税・所得税・住民税は損金不算入 |
減価償却費 | 減価償却費 | 資産(10万円以上)の定額償却費 | ○ | 法定耐用年数で計算 |
雑費 | 雑費 | その他の少額で内容が明確な支出 | ○ | 内容ごとに適切な科目への振り分け推奨 |
支払家賃 | 地代家賃 | 上記に同じ(賃貸物件の家賃) | ○ | 個人の住居費は不可 |
支払利息 | 支払利息 | 借入金利息・リース料の利息分 | ○ | 利息制限法など法規も要確認 |
給与手当 | 給与手当 | 社員の給料・賞与・残業代 | ○ | 役員報酬は別科目(役員報酬) |
賞与引当金繰入 | 賞与引当金繰入 | 賞与支給予定分の経費計上 | ○ | 実際の支給時と金額が一致しない場合も |
法定福利費 | 法定福利費 | 社会保険・厚生年金・雇用保険の会社負担分 | ○ | 社員分のみ対象 |
福利厚生費 | 福利厚生費 | 健康診断・社員食堂・親睦会費 | ○ | 役員のみや個人用途は不可 |
書籍購入費 | 消耗品費・新聞図書費 | 業務に必要な書籍・雑誌・専門書 | ○ | 個人利用分との区別必要 |
新聞図書費 | 新聞図書費 | 新聞・雑誌・業界紙の購読費用 | ○ | 業務上の必要性を明確に |
リース料 | 賃借料・リース料 | コピー機・車両などのリース契約料 | ○ | 所有権移転の場合は資産計上 |
会費・年会費 | 会費・年会費 | 商工会・業界団体等の会費・年会費 | ○ | 私的会員は対象外 |
寄付金 | 寄付金 | 社会貢献・災害支援等への寄付 | 一部制限あり | 損金算入額に制限あり |
※この一覧表は代表的なものを抜粋しており、実際の仕訳処理は事業内容や会計基準によって異なります。疑問点がある場合や新しい経費項目が発生した場合は、必ず専門家や公的機関の公式ガイドをご参照ください。
実務でよくある「経費の分類」Q&A
Q1. 交際費と会議費の違いは?
- 交際費は主に取引先への接待や贈答に使った費用で、法人の場合は損金算入額に上限があります。
- 会議費は社内会議や打ち合わせ、商談のための飲食代やお茶代など比較的少額のものです。
「金額が高い場合や、外部の人が多く参加する場合は“交際費”扱いになることがある」ため注意が必要です。
Q2. 消耗品費と備品の区分けは?
- 消耗品費は一般的に1点10万円未満の物品や、耐用年数1年未満のもの。
- 備品(資産計上)は10万円以上で長く使うもの(PC、机など)が該当します。
「迷ったときは“金額”と“使用期間”で判断しましょう」。
具体的な悩みへの寄り添いアドバイス
経理や経費の管理は「難しそう」「間違ったらどうしよう」と不安になることも多いですよね。
でも、きちんと分類して記録していけば、あとで必ず“自分を助ける資産”になります。
迷ったときは、「冷蔵庫の引き出し分け」と同じく、まずは“分かりやすく整理”しておきましょう。
「正解が分からなくて不安な時は、専門家や身近な経理担当に相談するのも大切な選択肢」です。完璧でなくても、一歩ずつ“見える化”を進めていけば大丈夫ですよ。
勘定科目の分類例(補足一覧)
勘定科目 | 読み方 | 主な用途 |
---|---|---|
旅費交通費 | りょひこうつうひ | 出張・営業時の交通費 |
通信費 | つうしんひ | 電話・インターネット等通信費用 |
消耗品費 | しょうもうひんひ | 文房具・PC周辺機器・少額備品 |
水道光熱費 | すいどうこうねつひ | 電気・ガス・水道料金 |
交際費 | こうさいひ | 取引先への接待・贈答 |
会議費 | かいぎひ | 会議時の飲食・軽食代 |
広告宣伝費 | こうこくせんでんひ | 広告・販促活動費用 |
福利厚生費 | ふくりこうせいひ | 社員向けの福利・イベント費用 |
支払手数料 | しはらいてすうりょう | 振込・決済・専門家報酬 |
修繕費 | しゅうぜんひ | オフィス・設備の修理費用 |
地代家賃 | ちだいやちん | オフィス・店舗の家賃 |
保険料 | ほけんりょう | 保険にかかる費用 |
減価償却費 | げんかしょうきゃくひ | 資産の減価償却費用 |
法定福利費 | ほうていふくりひ | 社会保険等の法定負担 |
寄付金 | きふきん | 社会貢献活動への寄付 |
雑費 | ざっぴ | その他明確な分類が難しい少額支出 |
経費・勘定科目一覧表を活用して賢く経理を進めよう
経費と勘定科目の管理は、ビジネスの“見える化”に直結します。
「このお金はどこに流れているか」「もっと効率的な使い道はないか」を考える第一歩です。
この一覧表や早見表を活用して、日々の経理や確定申告、決算業務を少しでもラクに進めていきましょう。
参考・公式情報
※税務・会計処理は必ず最新の法令や専門家のアドバイスに基づきましょう。本記事の情報は2025年5月時点の公開情報をもとに作成していますが、最終的な判断は自己責任でお願いいたします。